迎合できなかったひとたちへ

やりたいことを見失っている。

他人の目が怖い。

そんな不器用な人たちに読んでほしい本。

 

笑いのカイブツ

笑いのカイブツ

 

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伝説のハガキ職人であり、現在も放送作家として活躍中のツチヤタカユキさんの私小説です。

高校生のときから今まで、彼は生活のほとんどの時間を笑いに費やしています。

授業中やバイトの休み時間は誰とも言葉を交わさず、ひたすら自分の頭でつくったお題に対する大喜利の答えをノートに書きなぐっていきます。

その熱中ぶりは周りからは異常にうつり、デパートの警備員から不審に思われ、追い出されるほどです。

しかしながら、彼の努力と才能は21歳でケータイ大喜利でレジェンドになること、オードリーの若林さんや吉本の劇場支配人に認められることで証明されていきます。

高校生のころから、「ケータイ大喜利で21歳までにレジェンドになる」と決めてから、彼はネタ作りをするだけでなく、ウケたネタを細かく分析し、さらに吉本の劇場で構成作家として採用された後も、こっそりこれまで書かれた脚本が保管されている場所に忍び込み、その脚本を読み込んで「笑い」を分析し続けます。

才能もありながら、凡人が真似しようとしてもとてもできない壮絶な努力を毎日欠かさない。

これで成功しないわけがない。

 

ただし、彼には弱点がありました。

彼は人間関係を構築するよりも「笑い」にすべてを懸けることを選び続けたため、その才能や存在に嫉妬する人、疎ましく思う人たちに冷遇され続けます。

笑いが好きで吉本の劇場で働き始めた人たちでさえ、才能を持ちながら媚が売れない不器用な彼を無視し、軽蔑し続けました。

バイト先でも笑い好きが集まっていると信じていた吉本でも彼は居場所を見つけられず、それでも彼は生活のすべてを笑いにささげ続けます。

 

そんな彼の「笑い」に対する壮絶でひたむきな姿は、ストレートに心に響きます。

自分はここまで努力しているだろうか。

まだやれることがあるのではないか。

うまくいかなくて落ち込んでいるとき、彼の努力と不器用だけど好きなことに対して純粋な姿は、自分にまた前を向く勇気をくれます。

彼は自分が描いた夢や目標にまだ到達していないのかもしれない。

成功を追い求める世間から見たら、健康を損ない普通の幸せに背を向けてお金になりにくい「笑い」にすべてをささげつづけている彼を異常者であるとみなすかもしれない。

しかし、レビューをみればわかるように、彼の姿に凄まじい努力と孤独に圧倒され、あるものは勇気をもらい、あるものは自分と同じように好きなことを貫くために居場所を失った彼に慰められただろう。自分を曲げてしまえば楽になるのに、自分であり続けることを選んだ彼の損得を考えず「笑い」を追求し続ける純粋さに胸を打たれた人も多かったのではないか。

これは、笑いのためにすべてを犠牲にし続けた彼にしかできない偉業だろう。

読んだことのない方はぜひ、読んでほしい。

ちなみに、史群アル仙さんによって漫画化されるようです。

お試しで1話だけ読めるのですが、アル仙さんの昭和の漫画の画風が彼の私小説の内容とマッチしており、読み応えがあります。